NeuroStar® TMS治療装置(冷却機構ありモデル)

広がるうつ病治療の選択肢
rTMS*1は、パルス磁場によって渦電流を誘導し皮質ニューロンを刺激することで、非侵襲的に皮質や皮質下の活動を変化させる治療法です。
*1 rTMS(repetitive transcranial magnetic stimulation):反復経頭蓋磁気刺激
【監修】 鬼頭 伸輔 先生(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任 教授)
NeuroStar® TMS 治療装置は、成人のうつ病患者(既存の抗うつ剤治療で十分な効果*2が認められない場合に限る)の治療に用います。
*2ここでいう抗うつ薬による十分な薬物療法とは、1剤以上の抗うつ薬の至適用量を十分な期間投与したことがあることを指す1)。
トリートメントコイルの改良により、最短(18分45秒)での治療が可能となりました。
1) 日本精神神経学会 反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針 令和 6年4月(改訂)ver2作用機序
NeuroStar TMS 治療装置はパルス磁場を生成し、局所的な渦電流を誘導します。皮質内に生じた渦電流がニューロンを刺激し、神経伝達物質が放出されます。規則的な刺激を繰り返し行うことで、生理学的変化をもたらし、うつ症状の改善が期待できます。
臨床成績
NeuroStar® TMS治療装置による標準プロトコルまたはDashプロトコルによる治療を行った患者のレジストリ研究(海外データ)
Comparison of clinical outcomes with two Transcranial Magnetic Stimulation treatment protocols for major depressive disorder.1)完全アドヒアランス集団におけるPHQ-9スコアに基づく反応率および寛解率は、標準プロトコルとDashプロトコルで有意な差はありませんでした。
完全アドヒアランス集団におけるCGI-Sスコアに基づく反応率および寛解率は、標準プロトコルとDashプロトコルで有意な差はありませんでした。


PHQ-9スコア(MDDの症状レベルの重症度を測定する評価尺度):MDDの症状に関わる9個の質問項目について、「全くない=0点」、「数日=1点」、「半分以上=2点」、「ほとんど毎日=3点」として総得点(0~27点)を算出。0~4点=なし、5~9点=軽度、10~14点=中等度、15~19点=中等度~重度、20~27点=重度の症状レベルと評価。
*1 検定法:ベースライン(t検定、標準プロトコル vs. Dashプロトコル)、ベースライン後の転帰(2標本t検定、ベースラインスコアの調整なし、標準プロトコル vs. Dashプロトコル)
*2 最終評価時のPHQ-9スコアがTMS開始前のベースラインから50%以上減少した患者の割合
*3 最終評価時のPHQ-最終評価時のPHQ-9スコアが5未満の患者の割合
*4 検定法:χ2検定(標準プロトコル vs. Dashプロトコル)
※NeuroStar® Advanced Therapy Clinical Outcomes Registryに登録され、主診断がMDDでありPHQ-9評価をTMS実施前に実施し、ベースライン後も1回以上実施した18歳以上の患者のうち、治療反応性を認めた患者または治療を20セッション以上受けており、かつ急性治療終了後のPHQ-9スコアを有する患者で、規定プロトコル(標準またはDash)による治療を受け、セッションあたりの平均パルス数が2,900~3,500パルス、最低平均刺激強度が115%(全セッションの平均)の患者。Dashプロトコル群は、5回目の治療セッションまでにITIが11秒に短縮された患者


CGI-Sスコア(全般状態の重症度を測定する評価尺度):「1. 正常」、「2. 精神疾患の境界線上」、「3. 軽度の精神疾患」、「4. 中等度の精神疾患」、「5. 顕著な精神疾患」、「6. 重度の精神疾患」、「7. 非常に重度の精神疾患」の7段階で患者の状態を評価する。
分析対象は、当該集団のうちベースライン時とベースライン後のCGI-Sスコアを有する患者とした。ベースライン時のCGI-Sスコアが3以下の患者は除外した。
*5 最終評価時のCGI-Sスコアが3(軽度の精神疾患)以下の患者の割合
*6 最終評価時のCGI-Sスコアが2(精神疾患の境界線上)以下の患者の割合
試験概要 | |||||||
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目的 | NeuroStar® 経頭蓋磁気刺激(TMS)治療装置による標準プロトコルまたはDashプロトコルによる治療を行った患者の臨床転帰を比較する。 | ||||||
試験デザイン | 患者レジストリ研究 | ||||||
対象 |
米国内103の診療施設でNeuroStar® TMS治療装置による治療*を1回以上受け、2016年5月5日から2019年10月4日までにNeuroStar® Advanced Therapy System Clinical Outcomes Registryへ登録された大うつ病性障害(MDD)患者 ITT集団:標準プロトコル 613例、Dashプロトコル 1,493例 Completer集団:標準プロトコル 467例、Dashプロトコル 1,112例 完全アドヒアランス集団:標準プロトコル 276例、Dashプロトコル 354例
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左前頭前野(DLPFC)へのTMSセッションを標準またはDashプロトコルで1日1回実施。いずれのプロトコルでも、パルス頻度10Hz、刺激時間4秒、1セッションあたりのパルス数3,000回以上。 標準プロトコル[非刺激時間(ITI):26秒、セッション時間:37分30秒] Dashプロトコル[ITI:11~25秒、最短セッション時間:18分45秒] |
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方法 |
レジストリデータを収集し、患者背景、治療パラメータ、治療転帰を検討した。 〈NeuroStar® TMS治療装置による治療手順〉 初回治療時に、右短母指外転筋に対応する左運動野に単一パルス刺激を与え、母指の攣縮を目視で確認することにより運動閾値(MT)を測定した。さらに、MT Assistモードを使用し、パルス刺激の50%で視認可能な運動反応が誘発された最低出力強度をMTレベルと定義した。 左DLPFCの標的部位上にコイルを配置し、標準またはDashプロトコルで治療を行った。 各患者の年齢、性別およびMTレベル、各セッションの治療パラメータ(TMS強度、パルス頻度、刺激時間、ITI、パルストレイン数、パルスの合計数等)は、TrakStarソフトウェアを用いて集積した。 |
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評価項目 |
両プロトコルにおけるPatient Health Questionnaire(PHQ)-9スコアの変化、反応率および寛解率 両プロトコルにおけるClinical Global Impression-Severity scale(CGI-S)スコアの変化、反応率および寛解率 |
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判定基準 |
PHQ-9スコアの評価において、最終評価時のスコアがTMS開始前のベースラインから50%以上減少した場合を「反応」、最終評価時のスコアが5未満の場合を「寛解」と定義した。 CGI-Sスコアの評価において、最終評価時のスコアが3(軽度の精神疾患)以下の場合を「反応」、最終評価時のスコアが2(精神疾患の境界線上)以下の場合を「寛解」と定義した。
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PHQ-9スコア2):MDDの症状レベルの重症度を測定する評価尺度 MDDの症状に関わる9個の質問項目について、「全くない=0点」、「数日=1点」、「半分以上=2点」、「 ほとんど毎日=3点」として総得点(0~27点)を算出する。0~4点はなし、5~9点は軽度、10~14点は中等度、15~19点は中等度~重度、20~27点は重度の症状レベルであると評価する。 2)Kroenke K, et al: J Gen Intern Med 2001;16(9):606-613.
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CGI-Sスコア3):全般状態の重症度を測定する評価尺度 「1. 正常」、「2. 精神疾患の境界線上」、「3. 軽度の精神疾患」、「4. 中等度の精神疾患」、「5. 顕著な精神疾患」、「6. 重度の精神疾患」、「7. 非常に重度の精神疾患」の7段階で患者の状態を評価する。 3)Guy W. ECDEU assessment manual for psychopharmacology. Washington, D.C: Superintendent of Documents, U.S. Government Printing Office, U.S. Department of Health, Education, and Welfare Publication; 1976. p.76-338. |
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解析計画 |
〈解析対象集団の定義〉
〈解析方法〉 ITT集団を対象に一次解析を実施した後、Completer集団および完全アドヒアランス集団でも解析を実施した。各集団について、患者背景、治療パラメータ、臨床転帰を記述統計的に解析した。両プロトコルの間で、患者背景および治療パラメータを比較し、連続変数にはt検定、カテゴリ変数にはχ2検定を用いた。 |
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リミテーション |
本研究は自然主義かつ観察的研究であった。また、大部分の患者では、標準プロトコルよりDashプロトコルが後に実施されており、ITIの変更以外の経年的な変化が結果に影響した可能性がある。さらにDLPFCの位置を特定する方法は医師により様々であり、標的位置の特定方法の違いや治療を通じた標的部位の一貫性が転帰に及ぼす影響は未知である。 |
ITI:inter-train interval
安全性
本論文中に安全性の記載はございません。
電子添文の【臨床成績】4. Dashプロトコルに関する臨床評価報告[安全性]2)~3)を参照ください。
文献調査結果及び臨床経験データから構成されるDashプロトコルに関する臨床評価報告書の概要は以下のとおりである。
文献調査:10報の文献が得られ、5報(97例)はNeuroStar TMS治療装置を含み、残り5報 (124例)は他のrTMS治療装置を利用した文献であった。標準プロトコルと短縮の18.75分プロトコルとの間で副作用を比較した無作為対照臨床試験(30例、他のrTMS治療装置使用)では、いずれの群においても、てんかん発作や治療誘発性躁病/軽躁病等の重篤な副作用の発現はなく、刺激疼痛/不快感の発生率も群間で有意差はなかったと報告した。他の文献においても、てんかん発作は認められず、rTMSの既知のリスクである部位不快感、頭痛、浮動性めまい等の発現は標準プロトコルと同程度であった。
臨床経験:米国でDashプロトコルが承認・上市された2017年以降、米国においてDashプロトコルの利用率が上昇し、2022年現在、米国で実施される治療セッションのうち約70%がDashプロトコルを使用しているが、医療事故総数、てんかん発作、うつ症状悪化及び自殺関連事象数の比率の上昇傾向は認められておらず、Dashプロトコル承認前後の医療事故発生率が同程度であることが示された。FDA MAUDEデータベースの検索結果においても、Dashプロトコルによる治療セッションの増加にもかかわらず、米国でのDashプロトコル承認前後におけるMAUDEの報告件数は低値で同程度であった。また、新たなリスクも確認されなかった。
NeuroStar® TMS治療装置(標準プロトコル)
第I期多施設共同ランダム化二重盲検シャム対照試験(海外データ)
有害事象 | 実刺激群n(%) | シャム刺激群n(%) |
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頭痛 | 28(30.4) | 23(23.5) |
刺激部位不快感 | 17(18.5) | 10(10.2) |
不眠症 | 7(7.6) | 10(10.2) |
うつ病または不安の増悪 | 6(6.5) | 8(8.2) |
胃腸障害 | 6(6.5) | 3(3.1) |
疲労感 | 5(5.4) | 4(4.1) |
筋肉痛 | 4(4.3) | 4(4.1) |
回転性眩暈 | 2(2.2) | 2(2.0) |
皮膚疼痛 | 1(1.1) | 1(1.0) |
顔面筋攣縮 | 0(0) | 1(1.0) |
その他 | 19(20.7) | 14(14.3) |
実刺激群の重篤な有害事象として試験を中止した失神1例を認めたが、治験担当医は本品との因果関係は否定的と判定した
承認時評価資料:多施設共同ランダム化二重盲検シャム対照試験
NeuroStar® TMS治療装置(冷却機構ありモデル)の特徴
トリートメントコイルの改良により、最短(18分45秒)での治療が可能になりました。

トリートメントコイル

ヘッドサポートシステム
- 装置に内蔵されたレーザーで患者の頭部の位置を調整し、前後方向バー、上斜角など、各種コンポーネントの目盛りを用いることで、患者個々に応じた適切で正確な刺激位置の設定が可能です。
- 測定した位置情報はシステム内に記録できるため、次回以降の治療では刺激位置設定にかかる時間を短縮でき、毎回同じ条件で治療を行うことが可能です。

- オプション品のMTキャップを使用することで、MT位置やMT強度の決定プロセスを簡略化することが可能です。

コイルカバー(SenStar® Connect)
- 治療3,000回まで交換不要
- 衛生状態を保つため、治療毎に表面の不織布のみ交換が必要
- コイルカバーには接触センサー素子が付いており、運動閾値の検出中や治療中に頭部とトリートメントコイルの接触状態をリアルタイムにディスプレイで確認することができます。
- 治療中、トリートメントコイルと頭部が接触していない場合、その刺激回数分が自動でシステム内に記録され、治療セッション終了後に、記録された回数分を追加刺激することが可能です。


MT Assist®モード
- 独自のアルゴリズムを組み込んだ専用のプログラム「MT Assist モード」を搭載。
- 磁気刺激による患者の短母指外転筋の筋収縮を目視で確認し、その結果をタッチパネルに「YES」「NO」で入力することで、患者個々に応じた刺激強度を自動で導き出すことができます。

ディスプレイ
- 画面サイズが56cm(22インチ)と大型化し、利便性・視認性が向上しました。
※従来品:38cm(15インチ) - 指紋認証により、セキュリティを高めるとともに、スムーズな起動を実現しました。

電子チケットシステム
治療には、あらかじめ治療回数分の電子チケットの購入が必要となります。
発券された電子チケットの二次元バーコードを読み取ることで治療が可能となります。

主な仕様
一般的名称 | 経頭蓋治療用磁気刺激装置 |
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販売名 | NeuroStar TMS 治療装置(冷却機構ありモデル) |
承認番号 | 22900BZI00029000 |
医療機器分類 | 高度管理医療機器(特定保守管理医療機器) |
電気的定格 |
■本体
■トリートメントチェア
■ヘッドサポートシステム
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寸法 | 幅84cm×長さ234cm×高さ189cm |
重量 | 198kg |
製造業者 | ニューロネティクス社(Neuronetics,Inc) |
選任製造販売業者 | ヴォーパル・テクノロジーズ株式会社 |
販売業者 | 帝人ファーマ株式会社 |
警告 |
<適用対象(患者)>
<使用方法>
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※製品は、性能向上のため予告なしに寸法や仕様を変更することがあります。
・警告、禁忌・禁止、使用目的又は効果、使用上の注意等については、電子添文および取扱説明書をご参照ください。