広がるうつ病治療の選択肢

成人のうつ病患者(既存の抗うつ剤治療で十分な効果が認められない場合に限る)の治療



rTMS*1は、パルス磁場によって渦電流を誘導し皮質ニューロンを刺激することで、非侵襲的に皮質や皮質下の活動を変化させる治療法です。


*1 rTMS(repetitive transcranial magnetic stimulation):反復経頭蓋磁気刺激



【監修】 鬼頭 伸輔 先生(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任 教授)

NeuroMyStar(ニューロマイスター)装置全体画像

NeuroStar TMS 治療装置はパルス磁場を用いて脳皮質の局所領域に電流を誘導し、ニューロンを刺激することによって、成人のうつ病患者(既存の抗うつ剤治療で十分な効果が認められない場合に限る)の治療に用います。

作用機序

NeuroStar TMS 治療装置はパルス磁場を生成し、局所的な渦電流を誘導します。皮質内に生じた渦電流がニューロンを刺激し、神経伝達物質が放出されます。規則的な刺激を繰り返し行うことで、生理学的変化をもたらし、うつ症状の改善が期待できます。

臨床成績

臨床成績 多施設共同ランダム化二重盲検シャム対照試験(海外データ)1)

6週までの寛解率は、実刺激群14.1%(13/92例)、シャム刺激群5.1%(5/98例)で、シャム刺激群に対する実刺激群の優越性が示されました。

1) 承認時評価資料:多施設共同ランダム化二重盲検シャム対照試験
NeuroMyStar(ニューロマイスター)実刺激群とシャム刺激群における寛解率(主要評価項目)

[ 目的 ]

大うつ病性障害患者を対象に高頻度rTMSの有効性および安全性を検討する。

[ 対象 ]

抗うつ剤による薬物治療で十分な効果が認められず、DSM-Ⅳで大うつ病性障害と診断された成人患者*2190例(実刺激群92例、シャム刺激群98例)。

*2 HAM-D24合計点が20以上等

[ 方法 ]

2週間の無治療の導入期、3週間固定の治療期および最長3週間の追加治療期(臨床的改善*3を示した被験者対象)を実施した。

<実刺激群>

左背外側前頭前野への高頻度rTMS(刺激頻度10Hz、刺激強度120%MT*4、刺激時間4秒間、非刺激時間26秒間、1セッションつき3000パルス)を週5セッション実施した。

<シャム刺激群>

磁界を遮断する金属製インサートを備えた類似コイルと、実刺激と同じ体性感覚刺激を送出する頭皮電極を使用した。

<併用療法>

全ての被験者は、ベースライン評価前の2週間(フルオキセチンについては5週間)および治療期間中は抗うつ剤、抗精神病薬および抗けいれん薬は使用しなかった。鎮静薬および睡眠薬の限定的使用または抗不安薬の限定的使用は認められた。

*3 HAM-D24のベースラインからのスコア低下率30%以上
*4 運動閾値(Motor Threshold)

[ 評価項目 ]

主要評価項目 : HAM-D24合計点での寛解率(寛解はHAM-D24合計点が評価時点2連続で9点以下または最終評価時に3点以下)。
副次評価項目 : HAM-D24合計点での反応有無(反応は、合計点がベースラインより50%以上低下)等。

[ 解析計画 ]

主要評価解析対象集団はintention-to-treat(ITT)集団とした。主要評価項目および副次評価項目はロジスティック回帰モデルを使用して評価した〔独立変数は処置(実刺激・シャム刺激)、薬剤抵抗性の程度(低い・高い)、現在のエピソード期間、年齢、施設〕。

[ 安全性 ]

有害事象の発現率は、頭痛が実刺激群30.4%(28/92例)、シャム刺激群23.5%(23/98例)、刺激部位不快感が実刺激群18.5%(17/92例)、シャム刺激群10.2%(10/98例)、不眠症が実刺激群7.6%(7/92例)、シャム刺激群10.2%(10/98例)、うつ病または不安の悪化が実刺激群6.5%(6/92例)、シャム刺激群8.2%(8/98例)、胃腸障害が実刺激群6.5%(6/92例)、シャム刺激群3.1%(3/98例)、疲労感が実刺激群5.4%(5/92例)、シャム刺激群4.1%(4/98例)、筋肉痛が実刺激群4.3%(4/92例)、シャム刺激群4.1%(4/98例)、回転性眩暈が実刺激群2.2%(2/92例)、シャム刺激群2.0%(2/98例)、皮膚疼痛が実刺激群1.1%(1/92例)、シャム刺激群1.0%(1/98例)、顔面筋攣縮が実刺激群0%(0/92例)、シャム刺激群1.0%(1/98例)等であった。
実刺激群の重篤な有害事象として試験を中止した失神1例を認めたが、治験担当医は本品との因果関係は否定的と判定した。

その他の臨床成績(安全性)

けいれん発作

rTMSによるけいれん発作の誘発は、留意すべき事項です。
NeuroStar TMS 治療装置を用いて、大うつ病性障害患者307例を対象に、米国の42医療機関で実施した市販後臨床試験2)において、1例のけいれん発作(全般性強直間代発作)を認めましたが、一時的な症状であり、後遺症なく軽快しました。
また、米国の医療機器報告制度(Medical Device Reporting)に基づく報告では、6例のけいれん発作の報告があり、rTMS治療におけるけいれん発作は1回の治療期間あたり0.1%、治療1セッションあたり0.003%の発生率でした。

頭痛

NeuroStar TMS 治療装置を用いて、大うつ病性障害患者301例(実刺激群155例、シャム刺激群146例)を対象に、米国(20施設)、オーストラリア(2施設)、およびカナダ(1施設)の23医療機関で実施した多施設共同無作為化並行群間シャム対照試験3)4)において、最も多く報告された有害事象は頭痛でした。また、頭痛は治療1週目以降減少しました。
2)Carpenter LL et al: Depress Anxiety 2012; 29(7): 587-596.
3)Janicak PG et al: J Clin Psychiatry 2008; 69(2): 222-232.
4)O‘Reardon JP et al: Biol Psychiatry 2007; 62(11): 1208-1216.

装置の特徴

ヘッドサポートシステム

再現性の高い刺激位置設定が可能

  • 装置に内蔵されたレーザーで患者の頭部の位置を調整し、前後方向バー、上斜角など、各種コンポーネントの目盛りを用いることで、患者個々に応じた適切で正確な刺激位置の設定が可能です。
  • 測定した位置情報はシステム内に記録できるため、次回以降の治療では刺激位置設定にかかる時間を短縮でき、毎回同じ条件で治療を行うことが可能です。
  • 患者が快適な位置で運動閾値の検出や治療を受けられるよう、患者個々の身体的特徴に適応するように調整することが可能です。
NeuroMyStar(ニューロマイスター)ヘッドサポートシステム

コイルカバー(センスター)

治療中の頭部とトリートメントコイルの接触状態を確認することが可能

  • コイルカバーには接触センサー素子が付いており、運動閾値の検出中や治療中に頭部とトリートメントコイルの接触状態をリアルタイムにディスプレイで確認することができます。
  • 治療中、トリートメントコイルと頭部が接触していない場合、その刺激回数分が自動でシステム内に記録され、治療セッション終了後に、記録された回数分を追加刺激することが可能です。
NeuroMyStar(ニューロマイスター)コイルカバー(センスター)

MT Assist®モード

患者個々に応じた最適な刺激強度を自動算出

  • 独自のアルゴリズムを組み込んだ専用のプログラム「MT Assist モード」を搭載。
  • 磁気刺激による患者の短母指外転筋の筋収縮を目視で確認し、その結果をタッチパネルに「YES」「NO」で入力することで、患者個々に応じた刺激強度を自動で導き出すことができます。
NeuroMyStar(ニューロマイスター)MT Assist®モード

ディスプレイ

タッチパネル式で簡単操作

  • グラフィカルユーザーインターフェイスを採用し、画像を中心とした分かり易い画面表示により、治療フローを段階的に指示してくれるため治療フローが分かり易く、操作もタッチパネル式で簡単。
  • 画面サイズ:38cm(15インチ)
  • 解像度:1024×768
  • NeuroMyStar(ニューロマイスター)ディスプレイ1
NeuroMyStar(ニューロマイスター)ディスプレイ2

仕様と性能

一般的名称 経頭蓋治療用磁気刺激装置
販売名 NeuroStar TMS 治療装置(冷却機構なしモデル)
承認番号 22900BZI00029000
医療機器分類 高度管理医療機器(特定保守管理医療機器)
電気的定格 ■本体
  • 定格電圧:100~240V
  • 周波数:50/60Hz
  • 電源入力:4.4~15A
■トリートメントチェア
  • 定格電圧:100~230V
  • 周波数:50/60Hz
  • 電源入力:1.5~15A
■ヘッドサポートシステム
  • 定格電圧:1.5V
寸法 幅84cm×長さ234cm×高さ188㎝
重量 198kg
製造業者 ニューロネティクス社(Neuronetics,Inc)
選任製造販売業者 ヴォーパル・テクノロジーズ株式会社
販売業者 帝人ファーマ株式会社
警告 <適用対象(患者)>
  • 抗うつ剤との併用の有無に関わらず、本品による治療中に、大うつ病性障害の症状の悪化が続く場合は、本品による治療の中止も含めて治療方法を検討すること。[うつ病の悪化の可能性があるため]
  • けいれん発作の既往歴がある患者、又は発作閾値が変化している可能性のある患者(脳卒中、頭部損傷、重度の頭痛がある、脳血管障害、認知症、頭蓋内圧亢進症、頭部外傷、運動障害、電解質バランス異常)に本品を用いる際は、発作の兆候に注意し、施術中に発作の兆候が現れた場合は施術を中止すること。[発作のリスクが増大する恐れがあるため]
<使用方法>
  • 補聴器、眼鏡、アクセサリー類、携帯電話などの金属、電波を発する製品は、治療前に患者から取り外すこと。[磁場と干渉し熱傷、組織損傷をきたす恐れがあるため]
  • 可燃性の混合麻酔薬と空気、酸素又は亜酸化窒素環境下で使用しないこと。[爆発・引火による熱傷の恐れがあるため]

※製品は、性能向上のため予告なしに寸法や仕様を変更することがあります。

<ご使用にあたっての注意>
・警告、禁忌・禁止、使用目的又は効果、使用上の注意等については、添付文書および取扱説明書をご参照ください。

NeuroStarに関する講習会

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